脊髄脳仮説による疼痛・麻痺回復治療医 脳神経外科 西野克寛

診療について

脊髄刺激治療の専門外来を森山記念病院(金曜) (午前)に開設

• パーキンソン病などに伴う下肢痛による歩行障害

  パーキンソン病は、中枢神経系に影響を及ぼす進行性の神経変性疾患で、主に運動制御に関連する問題を引き起こします。下肢痛がパーキンソン病と関連する場合、その原因やメカニズムはいくつかの要因によるものとされています。

  
  

  下肢痛が発生する主な要因は以下の通りです：

  筋肉の硬直と痛み：
  パーキンソン病においては、脳内の黒質という領域でドーパミンの不足が生じます。ドーパミンは運動制御に関与する神経伝達物質で、その不足により筋肉が硬直し、痛みが生じることがあります。

  姿勢の変化と圧力の増加：
  パーキンソン病患者はしばしば前かがみの姿勢を取る傾向があります。この姿勢は下肢の筋肉に余分な圧力をかけ、痛みを引き起こす可能性があります。

  運動の減少と筋力低下：
  病気の進行に伴い、運動量が減少し、筋肉が衰えることがあります。筋力の低下は、下肢の痛みを引き起こす可能性があります。

  不規則な歩行パターン：
  パーキンソン病患者は歩行中に不規則なパターンを示すことがあります。小刻みな歩行（シャフリング歩行）や足の突然の動きの停止（フリージング）が、下肢の負担を増加させて痛みを引き起こすことがあります。

  
  

  これらの要因が組み合わさり、パーキンソン病患者に下肢痛が現れることがあります。治療の観点からは、薬物療法や理学療法が考慮されます。薬物療法では、痛みや筋肉の硬直を軽減するための薬が使用されます。理学療法は、筋力や柔軟性の維持、姿勢の改善、運動パターンの調整などを通じて下肢の痛みを軽減するのに役立ちます。

  最終的には、個人の症状や状態に合わせた専門的な治療アプローチで下肢痛の緩和と生活の質の向上に取り組むことが重要です。

• 線維筋痛症（下肢、上肢の痙縮による痛みを主とするもの）

  線維筋痛症（Fibromyalgia）は、慢性的な全身の痛みや過敏症状を特徴とする症候群です。筋肉、腱、関節などの組織に広がる疼痛が特徴であり、疲労感、睡眠障害、集中力の低下などの症状も見られることがあります。線維筋痛症は神経系の異常に起因すると考えられており、その具体的な原因は不明です。

  
  

  痙縮と痛みの関連

  線維筋痛症では、特に筋肉に痙縮のような状態が見られることがあります。これにより、痛みや圧迫感が生じることがあります。筋肉の硬さや緊張が持続的に存在するため、日常の動作や活動が制限され、痛みが増悪する可能性があります。

  
  

  痛みの特徴

  線維筋痛症の痛みは広範囲に及び、しばしば「ポリジック痛」とも呼ばれます。痛みは筋肉や関節の周辺に集中し、触れられたり圧力がかかると増悪することがあります。また、気温の変化やストレス、身体的な活動などが痛みの強さに影響を与えることもあります。

  
  

  診断と治療

  線維筋痛症の診断は症状と臨床評価に基づいて行われます。治療には以下のアプローチが取られることがあります：

  薬物療法： 痛みや炎症を軽減するために、痛み止めや筋弛緩剤、抗うつ薬、抗てんかん薬が使用されることがあります。

  運動療法： 適度な運動が症状の改善に寄与することがあります。生活機能を維持しつつ筋力や柔軟性を向上させることが目指されます。

  心理的アプローチ： ストレスや不安が痛みを悪化させることがあるため、リラクセーション法や認知行動療法などが取り入れられることがあります。

  ライフスタイルの変更： 睡眠の質を向上させるために、睡眠環境の改善や規則正しい生活リズムを保つことが重要です。

  線維筋痛症は個人によって症状が異なるため、それに合わせた個別の治療計画が必要です。

• 脊椎疾患や脊髄腫瘍後の、上肢、下肢の薬剤抵抗性、難治性疼痛

  脊椎疾患や脊髄腫瘍の治療後、一部の患者は慢性的な疼痛を経験することがあります。これは慢性疼痛と呼ばれ、神経の損傷、組織の炎症、手術の影響などによって引き起こされることがあります。この疼痛は上肢や下肢、背中、首などの部位に現れることがあります。

  薬剤抵抗性疼痛とは、通常の鎮痛薬や抗炎症薬が効果を示さない状態を指します。難治性疼痛は、患者にとって薬物治療が難しいほど激しい疼痛を指します。これらの状態は、日常生活や生活の質に深刻な影響を及ぼすことがあります。

  
  

  薬剤抵抗性疼痛、難治性疼痛の管理

  薬剤抵抗性疼痛や難治性疼痛を管理するために、さまざまな治療アプローチが存在します。

  
  

  薬物療法：
  神経痛や慢性疼痛に効果的な抗てんかん薬や抗うつ薬が使用されることがあります。また、局所麻酔剤の使用も検討されます。

  神経ブロック：
  特定の神経に麻酔薬を注入し、その信号伝達を遮断する方法です。薬剤が標的の神経に効果的に到達することで、疼痛を軽減する効果が期待されます。

  神経刺激療法：
  脊髄刺激療法や脳深部刺激療法などがあり、電気信号を使って神経系に影響を与え、疼痛を和らげることを目指します。

• 変形性関節症（股、膝、足）で、周囲組織や四肢に波及した難治性疼痛

  変形性関節症は、関節の軟骨の劣化によって関節の変形や炎症が引き起こされる慢性的な疾患です。この進行により、関節周囲の組織や四肢にも影響が及び、難治性疼痛が生じることがあります。

  
  

  変形性関節症と周囲組織への影響

  関節の軟骨劣化は、関節運動時の痛みを引き起こす可能性があります。この進行により、関節周囲の筋肉や靭帯が過度に緊張し、炎症を引き起こすことがあります。関節周囲の組織は、関節の安定性を保つために過度に負担をかけることがあり、組織の変性や炎症が生じる可能性があります。

  
  

  四肢への影響と難治性疼痛

  変形性関節症の進行により、関節の異常な動きや炎症が、関節以外の周囲組織や四肢にも影響を及ぼすことがあります。

  
  

  以下のような症状が現れる可能性があります：

  放散痛（ラジクラパシー）：
  変形した関節が神経に圧迫をかけ、脚や足に痛みやしびれが広がることがあります。

  筋肉の緊張と痛み：
  炎症や痛みにより、周囲の筋肉が緊張し、筋肉痛や張り感を引き起こすことがあります。

  歩行変容：
  膝や足の変形が歩行に影響を及ぼし、歩行の変化が四肢や腰への負担を増加させる可能性があります。

  
  

  難治性疼痛の管理

  難治性疼痛の管理には、さまざまな治療法が存在します：

  薬物療法： 鎮痛薬や抗炎症薬が疼痛緩和に使用されます。神経痛の薬や筋弛緩剤も検討されることがあります。

• 手術困難例や脊椎術後も改善しない難治性疼痛

  手術困難例とは？

  手術困難例とは、通常の手術アプローチでは適切な結果が得られない、または手術が難しい状況を指します。患者の特定の状態や合併症が関与している場合に起こることがあります。手術困難例において、疼痛の原因を特定し、適切な治療方法を選択することが難しくなることがあります。

  
  

  脊椎術後の難治性疼痛とは？

  脊椎術後の難治性疼痛は、脊椎手術後も改善しない持続的な疼痛を指します。手術による組織の変化や神経の影響などが原因で生じることがあります。

  
  

  難治性疼痛の管理

  手術困難例や脊椎術後の難治性疼痛の管理には、個々の症例に合わせたアプローチが必要です。

  薬物療法：
  鎮痛薬や抗炎症薬を使用し、疼痛の緩和を図る方法です。

  神経ブロック：
  疼痛の原因となる神経に麻酔薬を投与することで、一時的に疼痛を和らげる手法です。

  神経刺激療法：
  電気刺激を用いて神経の信号を変化させ、疼痛を軽減する方法です。

  心理的アプローチ：
  認知行動療法やリラクゼーション法を通じて、心理的な側面もケアします。

  リハビリテーション：
  筋力強化や姿勢改善を促すリハビリテーションが、疼痛の緩和に寄与することがあります。

• 正常圧水頭症後の痙縮、歩行障害残存例

  正常圧水頭症（NPH）とは？

  正常圧水頭症（NPH）は、脳室内に脳脊髄液が蓄積して脳の圧力が増加する病態ですが、通常の脳脊髄液圧が正常範囲内にある状態を指します。脳室が膨張し、神経系に圧力がかかることで神経症状が生じる可能性があります。高齢者に多く見られ、三大症状（歩行障害、認知障害、尿失禁）が特徴です。

  NPHの手術治療と痙縮、歩行障害の残存例

  NPHに対する一般的な治療法は、脳脊髄液の排出を促すバルブを埋め込むシャント手術です。脳脊髄液の流れを正常化し、脳室の膨張を緩和し、症状の改善を図るものです。しかし、シャント手術後にも症状が残存することがあります。特に痙縮や歩行障害が残存することがあります。これは、脳室内の圧力が完全に正常化しなかったり、シャントの調整が適切でなかったりすることが挙げられます。

  
  

  痙縮と歩行障害の管理

  痙縮や歩行障害の残存例に対する管理には、以下のアプローチが考慮されます：

  薬物療法： 痙縮の軽減には筋弛緩剤や抗てんかん薬を使用することがあります。歩行障害に関しては、運動療法や理学療法が行われます。

  疼痛管理： 痙縮や歩行障害による疼痛に対して、鎮痛薬や疼痛管理のアプローチが検討されます。

• 痛みと痙縮（持続的な筋収縮に関連する痛み）を伴う脳卒中後遺症

  脳卒中後遺症とは？

  脳卒中後遺症とは、脳内の血流が一時的または永久的に阻害されることによって、脳組織が損傷を受ける状態を指します。脳卒中の種類や場所によって、後遺症は異なる特徴を持ちます。

  
  

  痛みと痙縮（筋収縮）との関連

  脳卒中後遺症の一部には、持続的な筋収縮である痙縮が含まれることがあります。痙縮は、筋肉が無意識的に収縮し、強張ってしまう状態です。これにより、関節の可動域が制限され、痛みや不快感を引き起こすことがあります。

  
  

  痙縮に関連する痛み

  痙縮による筋収縮は、周囲の組織に圧力をかけることで痛みを引き起こすことがあります。痙縮した筋肉が骨や関節に圧迫されることで、痛みや不快感が生じることがあります。また、筋収縮によって血流が制限されることもあり、組織が酸素不足になり、痛みを感じることがあります。

  
  

  痛みと痙縮の管理

  痛みと痙縮を伴う脳卒中後遺症の管理には、以下のアプローチが考慮されます：

  薬物療法： 筋弛緩剤や抗てんかん薬、抗炎症薬などが使用されて、筋収縮とそれに伴う痛みを軽減することがあります。

  神経ブロック： 痛みを和らげるために、特定の神経に麻酔薬を注入する神経ブロックが検討されることがあります。

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